충무아트홀 중극장 블랙(忠武アートホール 中劇場ブラック)
2017年6月1日 20時~
제이크: 이석준 조이: 신성민
로빈: 신은정 트와일라: 이진희 라우디: 오정택
原作:Brad Fraser 演出:오경택
脚色:지이선 翻訳:김승완
制作:(주)연극열전
2016年初演時にあれだけ良い、良いと聞きながら結局見ることのできなかった作品。
一つ上の階で仕事をしながら噂だけ聞いて、でも見に行けない、という生殺し状態・・・。
今思い出すといろいろ懐かしい。
(千秋楽が3つの劇場とも同じ日で、撤収時にエレベーターをどういう順番で使うかで頭が痛かったこととか。弁当に飽きた人たちが大劇場の食堂(つっても搬入口にできた青空食堂)でご飯食べちゃダメなのか騒いだこととか)
さて『キル・ミー・ナウ』、噂に違わずものすごく良くて、私の観劇史上一・二を争うドン引きの号泣っぷりだった。
障害者の家族物、といったら「泣け!!!!!」と言わんばかりだか、これはすごく上手にできていて泣かされた感はなく。
作品の問いかけの答えを探そうとしても感情に邪魔されるほど、今思い返しても胸が痛い。
物語はこうだ。
ジョイは麻痺系の障害を持っていて、電動車椅子に乗って生活している高校生の男の子。
ジョイの介護に明け暮れるお父さん・ジェイクは、丁度息子が生まれた時に出版した本がベストセラーとなるものの、あまりに高く苦しい現実の壁に、執筆を放棄した作家。
母親は昔に交通事故で亡くなったが、ジェイクの妹のトワイラもちょいちょいお家に遊びに来たりしつつ、ジョイにはラウディという施設育ちのナイスな友達がいたりしつつ、まあなんとか暮らしていっている。
そんな中ジョイは性的な関心が芽生え始め、同時にいつまでも父親に頼っておらず自立したいと思うようになる。
障害があるせいで余計にジョイが心配なジェイクだが、そんな父親の子ども扱いにうんざりなジョイ。
しかしそんな中ジェイクが脊椎系の病気を発症し、ジョイの世話はおろか自分の面倒すら見れない状態になってしまい・・・、という感じ。
最初ジョイが「개쩐다~!!!(ちょーヤベえー!!!、まじパねー!!!、って感じ?英語だとFワードになるのかな)」を連呼するのに思わず笑ってしまう。
あんまり普通の高校生の男の子で。
この作品は全編を通して、ジョイは身体を上手く動かせないだけであくまで普通の男子高生である、ということを描き続けている。
(俺もネットでは普通の人だよ!、の台詞にああそっか、と妙に納得)
(観客の中ではこういう積み重ねがあるから、ロビンがジョイと話す時にわざとゆっくりはっきり喋る姿を見ると、なんとも言えない気分になる)
(偏見が小さくなり、すっかりジョイの知り合いのような気分になっている自分が可笑しい)
ジェイクが病気になってからは、To Doリストを使ってラウディをこき使い(笑)、アラームをセットして薬の時間を逃さず知らせてくれて、同世代の子よりもよっぽどしっかりしているくらい。
だからこそ身体が上手く動かないこと、ありとあらゆることを手伝ってもらわなければいけないことにうんざりだし、耐えがたい羞恥心に繋がったりもするだろうな、と思う。
そんなジョイの心情を、ジェイクも病気になってから理解したのではないかな。
ジェイクがロビンに死にたい、と漏らすのを聞いてしまったジョイ。
10代の子が、親が死にたいと言っているのを耳にしたらショックだろうに、それでもジェイクとトワイラと三人で話し合いの場を設けようとしたジョイに感嘆する。
そして、死にたいという父親の意思を認めてあげるその強さにも。
ジョイは誰よりもジェイクの苦痛、苛立ちを理解している。
そのことはそれまでの物語を通してよく分かるのだけれど、だけど観客の心情としては妹のトワイラが一番近くて。
頭と心がバラバラで途方に暮れてしまう。
死ぬって。安楽死って。殺してしまうってこと?明日からもういないの?
くだらないこと喋って、一緒にご飯食べて、そういう当たり前の時間がもっとずっと続くと思っていたのに?
あまりに過酷な展開に、動揺が抑えられない。
私はもちろんスタディ家の人間ではないし、障害を持つ子どもでも、重病の親でもないし、そもそもこれは虚構だ。
だけど想像してしまう。
何が最善なのか。何がその人の幸せなのか。
もし私の親がこういう状況になったら。
もし私がこういう状況になったら。
「내가 많은 걸 넣쳤구나아(俺はたくさんのことを逃してしまったんだなあ)」
私は、卒業式の日に目を覚ましたジェイクのこの言葉に、もう送ってあげるしかできることはないのかもしれない、と思った。
日々の小さな喜びや、息子の成長を見る楽しみ、そういうものを全て失って、そうして生きることになんの意味があるのだろうか。
正直今でも、この台詞を思い出すだけで涙が出る(大げさに嘆くわけではない、深い悲しみに満ちた、ぽつりとした台詞。イ・ソクチュンさん、ホントもうTT)。
それから、いつものようにジェイクを負ぶって、無理矢理元気よく、掠れる声でいつものように「しゅっぱーつ!」と浴室に向かうラウディにも泣かされた。
ラウディ、あんたホント良い子だよ・・・。
人間らしく生きる権利。幸せに生きること。
暖かいんだけど、ともかく胸にずっしりとくる公演。
おまけ。
こういうこと言うと怒られるかもしれないけど、外国人として外国暮らしをしてみて、外国人って一種の障害者みたいなもんだよな、と思う。
ジョイが、言葉が不明瞭でも実は相手と同じくらい考えのある人であるということ。
ジョイを理解してくれる人と、そもそも最初から目を逸らしてしまう人がいるということ。
あれ、これって私も知ってる感覚だ、と思ったのが面白くて。
まーこういう経験もしてみるもんで。
私もジョイくらい優しく、強くなりたい。
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