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5月25日『스모크(SMOKE)』

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2017年5月25日 20時~
대학로 유니플렉스 2관(大学路 ユニプレックス 2館)

초(超): 김재범 해(海): 윤소호 홍(紅): 유주혜
芸術監督:신영섭 プロデューサー:김수로, 김민종
作、演出:추정화 作曲、音楽監督:허수현 振付:김병진
舞台:이은석 照明:장서정 小道具:노주연
制作:㈜더블케이필름앤씨어터



という訳で、欲望の赴くままキム・ジェボムさんのチョを見に行ってきた。
チョのジェボムさん以外のキャストは前回同様。

なんか。なんかもう。ものすっっっごい良かったんですけど。何これ。
OSTをがっつり聴き込んでいろいろと考えを巡らせ、自分の中の受け入れ態勢を万全にして、さあ来い、どこからでも来い状態にして臨んだせいもあるのだろうけど、それにしたって良かった。
ボロ泣きしつつ、これはレジェンドだわ・・・と普段あまり思わないようなことまで思った。

OST一曲目『박제가 되어버린 천재(剥製になってしまった天才)』、泣きの入ったジェボムさんの声を聴きながら、私は彼のチョは結構弱いキャラクターなのかなと想像していた。
それがそれが、全然違ったよね。
と言うか何でこの人こんなに“支配者”の雰囲気なのだろう。
別に体格が良いわけでも、権力のニオイがするわけでも、オラオラしてるわけでもないのに。

ジェボムさんのチョは、ギョンスさんのチョほどイライラしたりやつれたりはしておらず、割りと余裕のある風。
でも冒頭刑務所シーンから内面にものすごい葛藤があるのがはっきり見て取れる。
それを隠してヘには何でもなさそうに振舞っているのに、段々ぐずぐずと崩れていくのだった。
ギョンスさんの崩れていく姿は可哀想に見えるが、ジェボムさんの崩れ方はどちらかと言うと狂気に近い感じがするのがぞおっとして良い。
作品が認められない苛立ちと諦め、怒りを爆発させるシーンは本当に説得力があった。
(「俺は20世紀に生まれ21世紀を生きようとしているのに、奴らは19世紀に生まれ18世紀を生きている!」)

で、そんなチョをホンが上手に突いていく。
この日のユ・ジュへさんはヘには優しいけどチョには一際厳しくてねえ。
きっ!とチョを睨みつける目に軽蔑が混じっていて、ひええって感じ。
結果的にイ・サンを苦しめることになった文才は、それはホンにとっては憎いものかもしれない。
だけどホンは、チョもイ・サンと共に苦しい時間を過ごしてきたことを分かっているわけで。
ヘが眠ってしまった後、チョとホンが言い争うシーンは今までで一番記憶に残っている。
(アスピリンと偽ってアダリンを飲ませるのは短篇『翼』の世界)

目の前で見たせいで余計に印象的だったのかもしれないが、私はトライアウトのチョとヘが向かい合って、「歩き始めた道なのだから、それでも行かなければいけない」と言うシーンが大好きで。
だけどよくよく見てみると、ホンがイ・サンの人生そのものとなった本公演の方が、脈絡としては深みがあって良いような気がする。
だからこそ最後にホンがチョとヘに「生きていたいじゃない!」と叫びながら縋るシーンは思わずぐっと来る。
ホンは、どんなに苦しくても、いつだって希望を抱かずにはいられない存在。
赤い始まり、真っ赤な太陽のような、生そのもののような女の子。
一度は捨てたと言っても、自分の人生なんだからやっぱり嫌いになれないだろうし、ホンはホンで、どうあっても生きてほしいよなあ。

ホンの比重が大きくなって三人のバランスが釣り合うようになったので、最後のナンバー『날개(翼)』もより一層生きてくる。
「私は女でも男でもない ただ芸術家、ただ詩人、ただ天才」
三人で一人、と言うのが多面的で良い。

そうそう、この日のユン・ソホさんのヘは出所してからがものすごく良かった。
太陽の光に眩しそうに、嬉しそうに目を細め。
それから咳をしながら階段に座ってたった一人で世界と向き合う孤独を味わう、そのちょっと寂しそうな顔。
『절망(絶望)』を歌いながら、それでもどこかに希望を見出しているような表情で。
自分の中に味方がいるということが分かっているから。

歩き始めた道なのだから、それでも行かなければいけない。
ただ一度だけでも飛んでみよう。
そう言った海、超、紅の三人、そしてイ・サンという詩人。
きっとずっとずっと思い返すことになる人たち、そして作品。